
独立系の資産運用会社さわかみ投信が4月30日付の朝日新聞などに全面広告を出した。トランプ関税で相場が荒れ模様のなか、「現金比率を高めて、次の株価急落時に徹底的に買い向かいます」とのタイトルで強烈なメッセージを発信した理由とは。社長の澤上龍氏に聞いた。
【写真】朝日、読売、日経の3社に全面広告を出した強烈メッセージはこちら
* * *
――このタイミングで朝日、読売、日経の3社に全面広告を出した理由は
「4月にトランプ米大統領が各国との相互関税を打ち出し、株価が急落しました。少し戻していますが、不透明感が強まっています。ちょうど新NISA(少額投資非課税制度)が始まって1年がたち、新たに株式投資を始めた人も少なくありません。動揺している人もいると思い、慌てなくてもいいんだということを広く伝えたかったのです」
「こういうメッセージは新聞がいいですね。スマホだと一瞬でスクロールされますが、新聞では見て、紙を持つ手が止まるのではないでしょうか。賛否両論ですが、反応がありました」
――広告では「経済が悪化しようと、我々の生活が消滅することはありません」と発信しています。生活と株価はどんな関係があるのですか
「私たちが生きている限り、生活が消えることはありません。生活に必要な企業は残るのです。仮に市場全体が暴落したとしても、必要とされる企業の株価はいずれ戻ります。それに、私たちはみな企業で働いています。その働いている企業にこそ希望を持ちたいと思うのです。苦しい時にその企業に寄り添ってこそ、本当の投資家ではありませんか。そんな意味を込めました」
――さわかみ投信は一貫して長期投資を勧めています。それでも多くの人は、金融商品を持つとどうしても価格動向が気になります。売ったり買ったりしたくなります。
「長期投資を勧めるのは、投資には社会を変える力があると考えるからです。我々が考える投資とは、自分の想いを乗せて企業に資金を投じることです。それは間違いなく経営者に届きます」
「相場が気になることはその通りですが、投資やお金に関する日本の教育は、自分の資産の価値に着目しすぎていると感じています。自分の資産は極めて大事ですが、それと同じくらい社会や産業、企業も大事です。社会や企業を応援するのが投資です」
「実は我々、機関投資家は、資金の出し手である受益者に振り回される存在です。受益者が利益を求めたらそれに従うしかありません。相場動向に振り回されるのではなく、長期的な視点で機関投資家や企業を見てほしいと思っています。そのためにも機関投資家や経営者ももっとメッセージを出すべきだと考えています」