
原因の一つが住宅ローンだ。相談に来た時も9千万円の残債を抱えていた。毎月の返済は二十数万円。さらに購入したマンションの管理費や修繕費も月10万円ほどかかる。固定資産税もばかにならず、家計を圧迫していた。
それだけでなく、小学校低学年の子どもに習い事として月7万円近くをかけていた。
共働きで一定の収入がある場合、利便性の高い都心やその周辺を求めがちだ。教育熱も高い。車もあると便利だからという理由だけで購入する。住宅、教育、車は家計を圧迫する3要素だ。塚越さんは「高額所得者であっても三つを追い求めるのは無理。一つか二つはあきらめないと資産が貯まらない」と考える。
さらに注意しなければいけないのは、税金や公的な仕組みの知識。所得が多い人ほど税金の負担は大きい。さらに、福祉や教育面では、800万~1千万円以上の所得があれば、給付などの対象外という制度も少なくない。
厚生年金も一定額で伸びが頭打ちとなり、必ずしも年金は所得の多さに比例しない面がある。「一般論ですが、1千万円前後から負担が大きくなるという印象です」(塚越さん)という。
総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、世帯年収が1500万円以上あっても、貯蓄が500万円未満の世帯が4.4%と少なからず存在する。貯蓄が1千万円未満で見ると、14.6%とそれなりの割合になる。
塚越さんは月収の3~6カ月分を「生活防衛費」として常に貯蓄しておくことをすすめている。老後などに備えた資産形成を目的とした投資とは別に、緊急時に使える資金も必要だと訴える。共働きでどちらかが病気などで働けなくなった場合、年収は半分になるが、住宅ローンなどは急には減らせないためだ。
また、高い所得の世帯に対し、「稼ぐ力だけに依存してはいけない」と力説する。とはいえ、夫婦とも大手企業で働いているケースだと、夏や冬のボーナスが2人で200万円を超すことも珍しくない。塚越さんはこう呼びかける。
「いきなり支出を減らすことは誰にとってもきついことで、使いたくなる気持ちもわかります。でも、人生を一回遠くまで見渡してみませんか。そうすれば、今、何をすべきなのか分かってきますよ」