
「年金はもらえないかもしれない、もらえたとしても金額は減るかもしれない」――。若い世代に根強く残る公的年金への不信感。国民年金や厚生年金がこの先100年にわたって維持できるか、厚生労働省が5年に1度、財政状況をチェックする「財政検証」が公表されるたびに、年金への不信感が募る。
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埼玉県内に住む30代半ばの男性もその一人。マイホームを手に入れたばかりで将来のライフプランを立てている。
「住宅ローンを完済できるのは30年後なのと、これから子どもが生まれたら大学卒業まで学費がかかることを想定すると、自分たちの老後はまだ考えられません。将来、受け取れる年金額が少なくなるのであれば、保険料を貯蓄に回した方がいいと思ってしまいます」(男性)
このように若い世代を中心に渦巻く「年金はもらえない」という点について、「まったくの誤解です」というのは、明治安田総合研究所経済調査部エコノミストの前田和孝さん。
「今は水道光熱費や物の値段が上がってきているところに、厚生年金、国民年金保険料に対する負担感が増えてきているので、そこに対する不満があるのだと思います。昨年7月に公表された『財政検証』によると、若い世代は今の世代よりも受け取る年金は多くなります」(前田さん)
不安を抱くのも無理はない
前田さんは今年公表した「『若者は年⾦がもらえない』は本当か 〜不信感はあれども、前の世代より受け取る年金は増加〜」というリポートで、若者たちを激励している。
その財政検証のモデル年金(夫婦2人の基礎年金と夫に支給される報酬比例年金)の所得代替率を見ると、2057年度に50.4%となり、24年度の61.2%から低下する。所得代替率とは、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合か、を示す。これを見る限り、年金がもらえなくなると不安を抱くのも無理はないのだが、今回の財政検証で新たな関連資料が提示された。
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