■異次元緩和に乗れなかった

A:実際、ビットコイン価格は400万円の大台を回復してきてるから、氷見野効果だったりして。

B:もう一人の副総裁の内田真一さんも企画畑のエースだったことを考えると、新体制は非常にバランスがいい布陣ですね。

──10年も続いた黒田前総裁の評価は?

A:異次元緩和によって、日経平均は1万2千円台から3万円まで上昇したので、証券会社にとってはありがたかった。

C:確かに株価は上がりましたが、その恩恵を受けることができたという個人投資家はそんなに多くないんですよね。日銀がETF(上場投資信託)を大量に買うようになった結果、押し目をつくらずに値上がりするようになって、買い場を見つけるのが難しくなった。高値をつかんでも気にしないという、頭を使わない投資家のほうが稼ぎやすかった。

D:アベノミクス以降、債券市場も株式市場も歪んでしまったのは事実ですね。官製相場なんて“乗ったもの勝ち”なんですけど、バカになれない投資家には難しい相場だったかもしれません。日銀が国債発行残高の52%も保有するようにしてしまったことを考えても、黒田前総裁の責任は重い。

A:そもそも、黒田さんはそれまでの結果にコミットしない日銀に批判的で、「2年程度で2%のインフレ目標を達成する」と公言していた人ですからね。それが10年やっても結果を出せなかったという点では、低評価になっても仕方がない。

(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

週刊朝日  2023年4月28日号より抜粋

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