A:個人や企業の借入金利は若干上がるでしょう。低い水準で硬直化していた金利を柔軟にして、金融機関の収益機会を増やすという目的もあるので。

B:その点でも、金融機関が植田新総裁に寄せる期待は高い。戦後初の学者出身の総裁ですが、日銀審議委員時代(1998~2005年)から金融政策決定会合の議論をリードした人で実務にも明るい。審議委員を退いたあとも日銀金融研究所の特別顧問を務めていたので、日銀職員はもとより、国内外の金融学識経験者からの信頼も厚い。

D:新総裁候補に名前が挙がったときには海外の機関投資家から「誰だ?」という問い合わせが殺到したけど、今は外国人投資家からも植田さんは高評価。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員会の委員長を務めてきたっていう経歴がいい。バイサイド(運用する側)の気持ちもわかるし、セルサイド(証券会社)とも付き合いがあったはず。そういう市場関係者にも明るい新総裁っていうのは、日銀の歴史上初めて。

A:第2次安倍政権以降、金融政策は事実上、政権主導で決められてたから、日銀総裁は誰がやっても一緒なんですけど、旧大蔵省の財政金融研究所の主任研究官(1985~87年)を務めたり、日本政策投資銀行の社外取締役も経験するなど、学者の割には政府と距離が近く、連携が取りやすいという点で打ってつけの人と言えるかも。

B:古くから植田さんを知る人によると、その財政金融研究所時代から植田さんは個人でもかなり積極的に株式投資を行っていたようです。投資の腕前はどれほどか定かではありませんが、バブル時代から投資経験があるっていうのは、市場関係者にもウケがいい。

C:実は個人投資家の間で注目されているのは、氷見野良三副総裁のほう。旧大蔵省入省後に金融庁長官まで上り詰め、主要国の金融当局者で構成される金融安定理事会(FSB)でも要職を務めた国際派ですが、ビットコイン肯定派としても知られている。20年に金融庁と日経新聞が共催したイベントでは「従来型の信用機能が弱まっている今、分散型の信用構築機能であるブロックチェーンに目を向けるべき」と話していました。暗号資産に明るい副総裁というのは個人投資家からすると非常に魅力的。

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