■意味なしYCC 6月に撤廃か?

A:一言でいうと、YCCを続ける意味がないんです。黒田前総裁は2013年4月に異次元緩和(量的・質的金融緩和)を導入して、年60兆~70兆円ペースでマネタリーベース(日銀が供給するお金)を増やすために国債購入枠の拡大などを進め、16年にはさらに日銀当座預金(民間銀行が日銀に預けている預金)にマイナス金利を導入しました。その結果、金利が急激に低下したのに、一向に資金需要は高まらなかった。日銀が掲げる「2%のインフレ目標」は達成できず、ひたすら大量の国債を買い続ける状況が続いた。それで、長期金利を誘導するYCCに移行したわけですが、今度は金利を±0.25%内に維持するために、大量の国債を買わされるハメになってしまった。結局、債券市場の流動性が急低下して、金融機関の国債取引を通じた収益機会は減り、日銀のバランスシートはいびつになった。日米金利差の拡大で急激な円安から“悪いインフレ”が起こり……といいとこなしでした。

D:昨年12月には10年債利回りの上限を0.5%に引き上げましたけど、米シリコンバレー銀行の破綻を発端にした金融不安も影響して10年債利回りは0.1%台まで下げた。直近では0.45%まで上がってきたけど、以前のように上限(0.5%)に張り付いてはいない。そういう意味でも、今はYCCを撤廃しやすい状況ではある。

C:YCCを撤廃するということは日銀の国債買い入れ額が減少して、一気に10年債利回りが上昇するのでは……?

B:日銀総裁交代に伴い、私はさまざまな金融関係者との勉強会に参加していますが、仮にYCCを撤廃しても、10年債利回りは0.7%ぐらいまでしか上がらないと予想する人が多いです。瞬間的に急騰しても1%を超えて推移する可能性は非常に低い。米国のインフレが落ち着いてきて利上げ打ち止め感が強まっていることもあって、日本で急激な金利上昇圧力が高まる可能性は低いと見られています。一方で、円安相場は一服して、インフレ圧力は低下する可能性がある。

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