いつの間にか富裕層出現の背景には株価の上昇などがある(写真映像部 和仁貢介)
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 気がついたら富裕層になっていた――。そんな夢のような現象が続出していると、野村総合研究所(NRI)が発表し話題になっている。

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 NRIが2月に公表した調査によれば、2023年時点で純金融資産(金融資産の合計から負債を引いた額)を1億円以上保有する「富裕層」と「超富裕層」が165万世帯に達し、05年の調査開始以来で最多だった。2年に1度のペースで調査を続けているNRIが今回「新たに見えてきた」と指摘したのが、「いつの間にか富裕層」と呼ばれる層だ。いったい、どのようなものなのか。

 まず「いつの間にか富裕層」についてNRIは、「年齢は40代後半から50代、職業としては主に一般の会社員」とする。年収は500万〜600万円で、純金融資産が5千万円以上1億円未満の「準富裕層」から富裕層に気づかぬうちにランクアップ。富裕層153.5万世帯のうち1~2割程度を占めているとみられる。こういう層が出現した要因の一つとしてNRIが挙げたのが、株価の高騰だ。「近年の株式相場の上昇を受け、運用資産が急増した」というのだ。

「アベノミクスから何が起きたかというところから読み解いていくことが必要です」

 こう話すのは、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さん。いつの間にか富裕層の出現の源泉は、「アベノミクスまで遡ることができる」と指摘する。

「2013年に始まったアベノミクスによる株主還元の強化と大規模な金融緩和によって、株価が上昇しました。その結果、資産運用の議論が活発になり、従業員持株会で自社の株を購入したりする人が増えてきました。翌14年1月には旧NISA(少額投資非課税制度)もスタートし、資産運用を始める若い世代が増えました。こうしてコツコツと堅実に積み上げてきた結果、いま花開いたと思います」

 NRI以外の研究機関も、富裕層増加のレポートを発表している。それを見ると、資産が増えている人たちは基本的に都市部に集中している。株価が上がることに対し、恩恵を受けやすい企業に勤める人が都市部に多かったのではないかという。

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