AERA 2025年4月7日号より
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 物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年4月7日号より。

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 AI時代が到来しても、メタバースに熱狂しても、結局、人間が奪い合うのはリアルな「土地」だ。

 2025年の公示地価はバブル崩壊以降で最大の上昇率を記録した。住宅地の上昇率トップは北海道の富良野で前年比約3割、商業地では千歳市で5割近くも急騰した地域が現れた。こうした北海道の地価急上昇の背景には、外国人観光客から人気が高いスキーリゾートの存在があり、外国人投資家がリゾート開発や周辺の不動産投資を積極的に進めている。東京の都心部でマンション価格が上昇しているが、その中心にいるのは外国人投資家だ。実際、2024年に海外から日本国内への不動産投資額は前年対比で7割も増加しているという。

 こうした動きには、日本の個人投資家が新NISAなどを活用して海外への投資を増やしていることが少なからず影響を与えている。

 以前から、国内で眠る約1千兆円の預金が海外への投資に流れれば日本は多額の外貨を稼げるという魅力的な話が語られてきた。仮に年利5%で運用できたとしても、年間50兆円の不労所得を得ることができる計算になるのだが、実際には、そんな単純な話ではない。

 個人が海外に投資する際には、円でドルを購入する必要があるのだが、これはドルを売って円を欲しがる人を見つけるということでもある。そのとき、相手が見つかるレートまで円安は進むことになる。

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