「別れるほどは嫌いじゃない」は難易度が高い

 だから友人から、十年以上一緒にいた人と別れた、とか、二十年になる直前に離婚した、とかいう話を聞くと、反対も批判ももちろんないけど、単純に、「十年も一緒にいたらお互いの嫌なところなんて死ぬほど知っていそうだけど、どうやって別れるほどの理由を見つけたの?」と感じてしまいます。

 十五年活躍していたバンドが解散すると聞いて、「音楽性の違いってそれは最初から若干我慢していたのか、急に新たな音楽性に突き進んじゃったのか」と純粋に疑問に思うこともあります。人と人が別れる理由って、一、二年でだいたい出尽くしちゃうというのが私の乏しい経験上での実感だからです。そして私は別れる理由が何かしら出てきたとき、それを乗り越えることをせずに別れてきたタイプなのだと思います。

 そんなわけでまず、二十年弱も異性パートナーと一緒にいると聞いただけで、人生の何周も先輩と話しているような気になってしまってもじもじしてしまうんですが、そもそもここ最近になるまで二人で過ごす休日が楽しみに思えていたことを祝福したい気分に私はなりました。ここ二年は平穏ではない日々だったとのことですが、それだけ喧嘩をしても一緒にいる判断があり、別れるほどは嫌いじゃないと言えることは、まずとっても稀で難易度の高いことだと思うのです。

 運命の人とか、本当に相性がいい人とか、そういうものがこの地球上にいるのかどうかは別として、だいたい人の盛り上がった気持ちや色恋感情なんて三年で燃え尽きることが多いと思うので、その先は企業経営のパートナーや長年の親しき友人のような、別の側面の関係性があってこそ、なおかつ辛抱や努力、工夫などを重ねてはじめて一緒の生活というのが可能になるのではないでしょうか。長く付き合うという点で言えば完全バージンみたいな私にはそう思えます。

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