ドジャース戦で見事な投球を見せたカブス今永昇太
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 日本からメジャーリーグへ渡って活躍するような選手は、幼少期から野球センスがずば抜け、他の子供たちと比べて実力が際立つ存在であることが多い。大谷翔平が典型だろう。大谷はリトルリーグで野球を始め、全国大会に出場。小学生のときから110キロの速球を投げ、本塁打を連発していた。

【写真】まだあまり知られていなかった高校時代の今永昇太

 だが、この選手は違う。DeNAから昨年、ポスティングシステムでカブスに移籍し、いきなり15勝をマークした31歳の今永昇太だ。今年はドジャースとの開幕戦でマウンドに上がり、4回を無安打無失点。注目された大谷との対戦では初回に二ゴロに打ち取ると、3回は高めのスライダーで二直と、2打数無安打に抑えた。珍しく制球に苦労して4つの四球を与え、球数が69球に到達したため疲労を考慮してマウンドを降りた。その後の救援陣が逆転を許してチームは敗れたが、今永の投球は及第点をつけられる。

 カブスを取材するスポーツ紙記者はこう語る。

「試合後の会見で語っていたように、無失点に抑えることにフォーカスしていました。独特の緊張感に包まれた東京ドームでドジャースを相手にして、失点すると一気に勢いに乗られると感じたのでしょう。彼の凄いところは俯瞰して状況を見られることです。頭の回転が速く、打者を抑える技術も備わっている。今年も先発ローテーションで1年間回れば、自然と数字がついてくると思います」

 20年ほど前、今永がメジャーで開幕マウンドを任される投手になるとは、だれも想像できなかっただろう。福岡で生まれ育った今永は、中学まで無名の存在だった。九州のアマチュア野球を取材するフリーライターが明かす。

「福岡では小学校で野球がうまい子供はシニアやボーイズリーグでプレーしますが、今永は中学の軟式野球部に所属しています。当時は線が細く、球速も110キロ出るかくらいで目立たない存在でした。高校で強豪校からの誘いはなく、県立北筑高校の当時の野球部長がたまたま車で球場近くを通りかかり、信号待ちをしていた時にマウンドで投げている今永を見て、きれいなフォームが印象に残ったようです」

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