広域強盗事件に関わったとして逮捕された永田陸人被告(中央)

13歳のころから犯罪に手を染めた

〈当時の私はこれまでの経験や環境から根深い犯罪傾向がありました。犯罪は身近な存在であり、一般の方と比較して倫理感が欠如しており、犯罪行為に対しての抵抗感があまりございませんでした〉

 面会で「暴力や薬物が身近にあるような環境で育った」「非行を繰り返す友人がいた」と語っていた永田被告。自身も当然のように悪事に手を染め、初めての犯罪は13歳のころだった。「最初はたばこだったか飲酒だったか……いちいち覚えていないです。記者さんは(自分の犯罪歴を)覚えているんですか?」と、冗談なのか本気なのか真顔でたずねられた。

 17歳の時には傷害と恐喝の罪で少年院に入り、その後も薬物の売人への強盗や飲酒運転など犯罪を重ねたという。高校を中退した後は、夜逃げの末にたどりついた金沢市で土木作業員として働いていた。

 意外にも、永田被告は当時の自分を「幸せだった」と振り返る。

〈一般的な「型」にはめ、分析しますと幸福であったと思います。一般的な人間社会に必要とされている、友人や恋人、満足な仕事場に給料などを私はもっていましたので、周りから見ても楽しく日々を過ごしているように写っていたかと思います。(※ご存知のとおり、私は一般の方と異なる考えの持ち主のため、一般論が分からず、自分のものさしで一般的な幸福の要素を綴りました~後略~)〉

「一般論が分からない」とつづった理由を面会でたずねると、永田被告は、「道徳や秩序や倫理観にもとづいた法治国家である日本において、ここ(拘置所)にいる時点で普通ではないですよね?」と答えた。以前から犯罪傾向が強く、最終的に重罪を犯した自分を“普通ではない”と認識し、心を許せる人に囲まれていた過去を“幸福”と認める姿に、わずかな良識の断片を見た気がした。

次のページ
サイコパスでも快楽犯でもない