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 先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA dot.」で2025年3月2日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。

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 自分は結婚に固執していないのに、それが普通であり多数派であるという価値観は根強い。地方在住だったイラストレーターの森下えみこさんは、フリーランスへの転身や東京に拠点を移したことで気持ちにも変化があったと話す。AERA 2025年3月3日号より。

──50代、シングル、フリーランスの森下えみこさん。30代で会社員からイラストレーターに転身し、40代で静岡から東京に拠点を移し、活動を続けてきた。「これまで“普通”から逃げてきて、最後に残ったのが本当にやりたいことだった」と振り返る。結婚して、子どもを産み育て、会社員として働くような「ちゃんとした人たち」のことを、とても眩しく感じるという。「でも、人生吹っ切れる瞬間ってあると思うんです」と笑う。年齢とともに、生きているだけで気持ちは変わる。そのことに気づくまでの心情を語った。

 地元の静岡に住んでいた時は「30代独身」という扱いでした。勤めていたデパートでは、常連のお客さんに「(勤務年数が)もう長いね、結婚はしないのか」と言われたり、休日明けに出勤すると、「イオンでご飯を一人で食べてたでしょ」と同僚から言われたり。仲良くしていたパートの女性が退職するときに「一人もいいけど、女の幸せも考えないとダメよ」と言われた時、心の底では私のことをそう見ていたんだなと思って、がっかりしたこともありました。

 私は兄と妹がいて、どちらも結婚して子どもがいます。妹一家と敷地内同居をしている両親は、わたしが独身でいることについて何も言いません。その一方で、親戚からはズバズバと言われてきました。田舎では結婚するのが当たり前で、多数派(既婚者)が正解で、少数派(独身者)は間違っている感じでした。

 30代前半は「うんざり……」と思っていましたが、言い返したら「だから結婚できないんだ」と言われるのが目に見えていたんで、「仕事で忙しいから~」とかわしていました。そういう人たちと物理的な距離を取りたかったので、正月休みはずらして帰省していましたね。

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東京に行けば変われる