自殺の問題に詳しい南山大学准教授の森山花鈴さんは、「長期的な目線で対応していくのが必要な時期に入ってきている」と指摘する(写真:Getty Images)
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 厚生労働省によると、昨年、自ら命を絶った小中高生は527人。統計のある1980年以降で過去最多だ。子どもが自殺に追い込まれることのない社会をつくるためにはどうすればいいか。自殺対策に取り組むNPOと、識者に聞いた。AERA 2025年3月10日号より。

【子どもの自殺過去最多】悲しい数字はどこまで増えてしまうのか・・

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 今、求められているのは、悩みを抱える子どもたちをどう支えていくかだ。

 自殺防止に取り組むNPO法人「OVA(オーヴァ)」が開発したのが、「SOSフィルター」だ。学校に知られずに相談先などを知ることができる。

 学校で1人1台配布される端末に、教育委員会等の管理者がSOSフィルターをインストールする。SOSフィルターには「消えたい」「いじめ」「家がつらい」「体を触られた」など自殺や自傷、人間関係、性暴力などに関する約5千のキーワードが登録されている。これらのキーワードをネットで検索すると、画面に「相談のコツ」や「相談の窓口」、さらには「家族や友達に話してみる」「休みをとってみる」などと気持ちを和らげる方法などが自動で、ポップアップ表示される。24年7月から無償提供を始め、現在、三重県伊賀市など全国の自治体の端末約10万台にインストールされている。ウェブブラウザーの「Google Chrome」や「Microsoft Edge」などを利用する端末(iOS端末を除く)であれば、個人でも無償でインストール可能だ。

 SOSフィルターは「自殺リスクの高い人にリーチできる」と「OVA」代表の伊藤次郎さん。

「例えば、自殺の方法を検索すると、有害な情報を取得する可能性もあります。SOSフィルターをインストールすることで、強制的に画面にポップアップが表示される仕組みになっているので、有害な情報ではなく生きる支援に繋げることができます」

ネットワークで支援

 自治体も動き出している。

 長野県は19年10月、精神科医や心理士、精神保健福祉士、弁護士ら多職種の専門家からなる「子どもの自殺危機対応チーム(チーム)」を立ち上げた。

 長野県では、20歳未満の自殺死亡率が全国を上回る状況が続いていた。そこて「子どもの自殺ゼロを目指す戦略」を策定し、その最大の柱としてチームを発足させた。一番の特徴は、「自殺リスクがある児童について、多職種の専門家による多角的なアセスメントの実施および助言」(県保健・疾病対策課)。

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「寄り添わない支援」