・ソ連は、日ソ中立条約を破って対日参戦した。


・ポツダム宣言受諾後の、1945年8月28日から9月5日までに、北方4島を占領した。

 それで、日本側は「不法占拠だ!」と捉えているのだが、ロシア側の意識は、日本とまったく異なっている。ロシア人と話していて感じるのは、彼らには、「固有の領土」という言葉の意味がわからないということだ。

●ロシア人が「北方領土は自国の土地」と単純に信じているのはなぜか?

 なぜだろうか? ロシア人は、「領土というのは、戦争のたびに変わるもの」という意識なのだ。これは、おそらくロシアの歴史と深く関わっている。ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国だ。首都はキエフだったが、現在はウクライナの首都になっている。ロシアの起源である都市が、外国にあることに注目だ。

 キエフ大公国は1240年、モンゴルによって滅ぼされた。その後、モスクワ大公国(1263年~1547年)→ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展した。このように、ロシアは東西南北を征服して領土をひろげ、ついに極東にまで到達した。

 つまり、ロシア領のほとんどは、歴史的に繰り返された領土争いによって獲得した「征服した土地」で、いわゆる「固有の領土」は、比率的にとても小さい。

 こういう歴史を持つロシアに、「固有の領土だから返してくれ!」と言っても、「固有の領土とは何ですか?」と逆に質問されてしまう。だから、北方領土について、「ロシア(ソ連)は日本に戦争で勝った。結果、北方4島はロシア(ソ連)の領土になった」という意識なのだ。

 インテリになると、もっと論理が緻密になる。

「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められた。ところが日ロ戦争の後、勝った日本は南樺太を奪った。ロシアが、南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれただろうか?」と質問をされることがある。

 筆者は、「返さなかっただろう」と正直に答える。

 さらに、「日本は、日清戦争で勝って台湾を奪ったが、清が返せと主張し続けたら、返しただろうか?」と続ける。筆者は、「返さなかっただろう」とまた答える。

 すると、ロシアのインテリは「日本は戦争に勝って奪った領土を、話し合いでは返さない。しかし、自分が負けた時は、『固有の領土だから返せ!』という。フェアじゃないよね」と言う。

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