書き出したのは、母が亡くなって半年後。完成したのは、約1年後でした。『愛媛県新居浜市上原一丁目三番地』というタイトルの小説で、幸いなことに出版社が原稿を読んで、本にしてくれました。

 その時間が、僕にとって「喪の仕事」でした。

 それでも、母が亡くなってもう5年目、父で6年目に入りますが、まだ、一日に何度も母や父のことを思います。思ってしまいます。

 これがあと20年とか30年とかしたら、「忘れないようにしよう」とするのだと思います。

 ですから、ベルコダさん。「喪の仕事」がつらくて耐えられそうにない時は、何かを始めてみるのもいいかもしれません。

 ただの時間潰しの趣味です。絵を描くでも、旅行に行くでも、楽器を習うでも、料理教室に通うでも、とにかく、上達を目指すのではなく、社交するのでもなく、ダラダラと時間を潰すのです。

 そうして時間を過ごせば、夫のことを思う密度は、少しは減るかもしれません。
 

 でも、ベルコダさん。

 何もしなくて、ただ「喪の仕事」に身を任し、今の気持ちを持ち続けて、泣き続けて良いと思います。それが、今のベラコダさんにとって必要なことなのですから。

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