愛子さまが寄せた和歌の上の句に、「ふたたび会はむその日まで」という表現がある。当初、愛子さまは「会えるその日まで」という表現をお使いだった。
「そこだけは口語ですがよいでしょうか、とお伝えしました」
愛子さまにとって思い入れのある言葉だったようで、変更には躊躇されていたという。しかし、ご自分で書物などを調べ、永田さんにこう連絡をしてきた。
「やはり、古典文法ではこのような使い方はありませんでした。なので、『会はむ』としたいと思います」
納得がいくまでご自身で調べ、納得がいくまでご相談役とやり取りを続ける。
「ご自身でも納得のいくまでお調べになる学びへの熱心さは、ご両親譲りかもしれませんね」
そう言って、永田さんはほほ笑んだ。
皇后さまの和歌の「リアリティ」
皇后雅子さまは、昨年6月の英国公式訪問で、母校のオックスフォード大学を34年ぶりに訪れた感慨を御歌に詠み込まれた。
三十年(みそとせ)へて君と訪(と)ひたる英国の学び舎(や)に思ふかの日々の夢
「オックスフォードにはそれぞれ別々に留学したけれど、34年を経た再訪では、陛下とご一緒に母校を目にすることができた。その感動が素直に伝わるお歌です」(永田さん)
雅子さまは、東宮時代から愛子さまや陛下との時間など、ご家族について詠まれることが多かった。
永田さんは、「皇后」の立ち位置ではなく、母として、妻として、そして個人として詠まれる和歌だからこそ人間味のある優しい視点がある、と話す。
雅子さまも、歌会始のためにいくつかの和歌を詠んでいる。公務先でご覧になった場面なのか、伝統工芸にたずさわる職人が自分の孫にその仕事を見せる様子を詠み込んだ和歌も候補になったという。
「皇后さまは、ご自身の目でご覧になった対象を和歌に詠み込まれる。だからこそ、皇后さまの和歌はリアリティをもって聴く人の心に響くのでしょう」