元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】最近買って良かったものが〇〇パンツ!!

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 非常に今更だが、先日人生で初めてネット通販で服を買った。服を試着せず買うなんて全然自信ないので一生そんなことをするつもりはなかったんだが、長年の超お気に入りだった白いセーターのシミが看過できぬレベルとなったうえ、袖の付け根が大きく破れてきたので泣く泣く処分して後釜を買うことにしたのである。

 最初はむろん店で買うつもりだったが、ふと気づけば、後継に相応しい品にどうしても巡り合えぬまま早5年。改めて考えたら今や半年に一度くらいしか服屋を覗くこともないからそれも当然で、一度ネット通販に挑戦してみるかと思ったわけです。

 あれこれのショップを念入りにチェックし比較検討したうえで購入手続きを取り、待つこと約1週間。届いた包みをドキドキしながら開けると、開けた瞬間に形がイメージと違って「もっさり」なうえ、着てみたら袖が短く手がニョキッと飛び出る。サイズ選びを間違えたかと交換を依頼して再び約1週間。だがようやく届いた品も袖は短く、身頃のもっさり感が増しただけだった。再び返品。ちなみに返品は無料。ありがたいことだが、無駄に配送の方の手を煩わせただけに終わったことが後ろ暗い。

最近買って良かったものは近所の古着屋で手に入れた昔の毛糸のパンツ。懐かしくて最強(写真/本人提供)

 で、結論としては、本当に今更だがネットで服を買うってめっちゃ難しいんですね! でも冷静に考えたらリアルに服を買う時だって、いざ試着すると驚くほど似合わないことはザラなんだから、写真とサイズ表だけで似合う服に巡り合える確率が高かろうはずがない。そして何よりも、最初から最後まで孤独すぎる買い物だった。こんなにもワクワクしない「服を買う」体験は人生初である。

 で、みんなどうしてるのかと周囲の人に聞いてみると、案外多かったのが、多少気に入らなくてもそのまま着るというご意見。どうせすぐ買い替えるからと。なるほどネット通販で「究極のお気に入り」を探したことが間違いだったのか。というか、今や究極のお気に入りを探す行為そのものが時代遅れなのか。

AERA 2025年1月27日号

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