どんなに仲のいい夫婦でも、いつかはどちらかが先に逝く。「その後」を生きるためにも「今」を大切にしたい(写真:iStock / Getty Images Plus)
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「AERA dot.」に最近掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は12月20日に「AERA dot.」に掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

【データ】年齢によってまったく違う「孤独感」。1位となった年代は?

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 連れ添ってきたパートナーを失ったとき、その後の日々は厳しい道のりだ。特に男性は、自分を取り戻すことが難しいという。AERA 2024年12月23日号より。
 

「前向きに生きることに頑張りすぎないで、ただ老いてもよし。絶望感と寂しさで自殺してもよし。何くそともがいてもよし。そう感じています」

 60代のこの男性は一昨年、妻を亡くした。人生すべてを持っていかれた気持ちになったが、自分らしさを取り戻すことが死んだ妻の遺言のように感じ、がむしゃらにもがいたという。

「何もしないで家にいて天井を見ている時間を減らすため、仕事は救いになりました」

 しかし、「突然サヨナラされた妻」をひきずる毎日は続く。

「いまだに写真がまともに見れません。やさしく可愛いやつでしたし、妻のコピー(代わり)は見つかりません」

抗うつ剤が手放せない

 パートナーの死にどう向き合い、その後をどう生きるか。一冊の本に思いを込めた人がいる。漫画原作者の城アラキさん(71)。2010年の4月、妻の淳子さん(当時54)をすい臓がんで失った体験を『妻への十悔 あなたという時間を失った僕の、最後のラブレター』にまとめ、今年5月に上梓した。

 淳子さんの死後、抗うつ剤が手放せない時期もあれば、酒浸りの日々もあった。15年には城さん自身が大腸がんの手術も。苦しい時間の中、2年間かけて本を書いた。なぜか。

「大学時代から一緒でしたから、妻が死ぬということは自分の半生を失う感じでした。13年間、『妻の死』が受け入れられなかった。文章にすることで自分の中でそれをもういちど確認し、納得したいという思い。また妻がどういう人間であったかを残したい気持ちもありました」

 本を書いたことで気づきもあった。パートナーを失った後、「回復はしない」ということだ。

「13年たってもやはり妻のことを語ると涙が出る。やはり、妻がいた時点には戻れない。自分が違う場所に着地するしかない。パートナーを亡くした人は、『回復しよう』とは思わない方がいい。しっかりできないのにしっかりしようとすると、どこかに無理が来ると思います」

 連れ添ってきたパートナーを、失う。悲しみの中、「その後の日々」は言い尽くせないほどの厳しい道のりになる。

「とくに男性は、自分を取り戻していく過程で難しさを抱えがちだと思います」

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