大手電機メーカーの営業部長の場合は、母親が認知症となり、所属長に介護休業を申請したら「えっ、介護休業?過去に男性は会社で5人しか取得していないぞ」と露骨に嫌な顔をされ、3回目の申請の際は「もう無理だろう。辞めなさい」と言われたそうです。
その方は2回目以降からは無給状態でしたが、その介護休業期間中も電話とメールでの仕事を強要されていたそうです。休業中、親の介護と仕事のストレスで、体重は20キロも減ったそうです。会社のことを非常に恨んでいましたね。
生保会社の女性の営業課長ですが、在宅勤務などの変則勤務と介護休暇を取りながら、実家の母親の介護に対応した結果、心を病んでしまい、母親を殺めそうになってSOSを出してきたケースがあります。
生命保険の場合、独立事業者という側面があるため、休んでいても何らかの仕事をやらざるを得ないのです。会社からは母親の実家の近くの支社に転勤も命じられたようですが、お子さんの学校の問題もあり、転勤を断っていたそうです。結果的に「後輩に自分のポストを奪われた」と泣いていましたね。
介護休業を取得したら、契約社員になることを勧められたケースもあります。デパートの外商の方ですが、義理のお父さんの介護が必要となり、介護休業を申請したら、「君が休まなくてはいけないのか」と言われ、仕方なく、変則勤務と有休で半年間がんばってみたものの、結局、ギブアップ。
上司に介護休業を取得した際、「君のような優秀な人間なら、契約社員で歩合の方が稼げるぞ」と勧められ、つい了承してしまったそうです。当時、外商スタッフの契約社員化が進んでおり、本人も自信があったから了承したとのことですが、後で自分の部下からは「(上司が)『彼には辞めてもらうしかなかった』と言っていた」と聞かされて、愕然としたそうです。
こんな話はたくさんあって、語りきれません。
●育児休業は若い女性中心だが介護休業は働き盛りの男性も多い
――育児休業の場合、昔に比べると、かなり取得しやすくなったと聞きます。それに比べ、介護休業の利用率は3%程度です。まだまだ企業側の理解が低いのでしょうか。
育児休業の場合、企業側が想定している対象者は女性です。しかも比較的に若い社員に限られています。その証拠に、育児休業は女性の取得率は上がっていますが、男性は低いままというのが実態です。
一方、介護休業の場合、対象者は働き盛りの40~50代が中心であり、男性も多い。この世代は、部課長クラスの管理職、あるいは職場のリーダー的な存在であるために、企業側はどうしても「長く休まれたら困る」という考えが強いのです。