
「コンビニ百里の道をゆく」は、ローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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「人生は、山あり谷あり」。その言葉通り、誰もが調子のいいときもあれば、調子がまったく出ないときもありますよね。不運やトラブル続きで「私いま、人生最大のピンチかも」と思ってしまうような時期もあると思います。
今振り返るとコロナ禍が「最大のピンチ」だったかもしれません。でも、やまない雨はないし、明けない夜もない。ピンチの後には必ずチャンスがめぐってくると、私は考えています。
ピンチを迎えたり、調子が出なかったりというときこそ、自分が成長するチャンスであり、ピンチはそのための努力を促してくれる「成功の母」、ということだと思います。
私は大学を出て三菱商事に入社した後、3年目で販売会社に出向になりました。当時は出向というと、シニア年代の方が「片道切符で最後の場所に行く」というようなイメージがまだありました。同期の中には海外へ行く人も。私は、本社から販売会社へ。多少なりとも落胆したような気がします。
でもその出向先で、全国のスーパーマーケットにいちから営業をかけ、実際に売り場という「現場」でさまざまなことを体験し、教えていただいたことが、私にとって大きな財産になりました。

当時はまさか将来、自分がローソンで働くなんて思ってもいません。ただ単に「これはピンチか!」と感じていたわけです。でもその25年後、コロナにみまわれて「さて、どうしよう」となったとき、「とりあえず現場に行こう」とすぐに思うことができた。そこからいろんなことが見えてきて、ピンチを脱し、さらにはチャンスに変えていくことができた。そこにつながっているわけです。
ピンチだと感じ、精神的にも「いまがどん底だ」と思っている人も、「ピンチは、きっとチャンスも連れてくる。必ず将来の糧になる」ということを胸に刻んでほしいなと思います。
※AERA 2024年12月9日号

