タワーレコード株式会社取締役COOの高橋聡志さん(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 タワーレコードが最高益を更新した。と聞けば、多くの方は「サブスク配信の時代なのに、どうして?!」と驚くのではないだろうか。推し活をバックアップする姿勢、そして、販売データだけに頼らず、スタッフの熱意を大切にする“価値のある無駄”という社風。タワレコ大復活の理由を解き明かす。

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コロナ禍の赤字から一転、2024年に最高益を更新

 コロナ禍の2021年、2022年には赤字に転落していたが、2023年には約10億の黒字に。そして2024年2月期(第43期)の決算は、前期比85.5%増の18億8300万円と増益を達成した。この数字はCDがもっとも売れていた時期を上回る過去最高益。音楽ライターとして25年以上活動してきた筆者も、タワレコの復活は(本当に失礼な話だが)想定外だった。

「コロナ禍を経て、人々の“リアル”に対する欲求がこちらの想像以上に強まっていた。私達の施策が、みなさんの欲求の受け皿になれたのかなと思っています」

 業績がV字回復した理由についてこう語るのは、タワーレコード株式会社の取締役COOの高橋聡志氏だ。

 2020年2月にはじまったコロナ禍による外出規制により、店舗営業ができなくなったことを受け、タワレコはオンライン販売に注力しはじめた。当初は「仮にコロナが終わっても、オンライン主体の生活は変わらないのではないか」という見立てだったが、新型コロナウイルス感染症の扱いが5類になった昨年5月あたりから店舗への来店者数も増加。オンライン販売の堅調と店舗での伸びの相乗効果が、業績全体を押し上げたというわけだ。

 音楽ファンがタワレコに足を運ぶ理由。一つめは、“応援する人を応援する”というスタンスだ。この姿勢が生まれた経緯について高橋氏「単に『推し活をしている人たちをサポートしよう』と突発的に始めたのではなく、45年前の創業時からインディーズや洋楽ロックで活かされていたスタッフの“好き”でレコメンドする精神が膨らんで多様化し、今の時代で言う“推し活”にハマったという流れでした」と説明する。

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