弊害としてまず挙げるのは、痔だ。便座に座っている体勢は、椅子に座っている時と違って肛門が座面より下の位置になり、重力で血管が圧迫される。無意識にいきんだ状態になり、これが長く続くと、肛門の内側に負担がかかって痔、中でもイボ痔(肛門の外側にできる外痔核)の原因となることがある。
便器の18倍もの菌
次に、便秘。便座に座っているのにスマホをいじるなどして便をしないでいると、排便しようとする本来のぜんどう運動が利かなくなり、出るものも出なくなってしまう。
「そして一番怖いのは、トイレに持ち込んだスマホが感染源になるリスクです。普段から触るスマホには皮脂や汚れが付着していて、菌が繁殖しやすい状態。英国の研究者は、トイレの便器の18倍もの菌がスマホについているとの見解を述べています」(〆谷医師)
日本食中毒防止協会の中島孝治専務理事は「手を洗っていても、危ないですよ」と言う。
“大”をすると便器の中にウェルシュ菌という食中毒菌が舞い散る。自然界に広く分布し、健康な人の便からも検出される菌だ。これらの菌はお尻のあちこちにつく。洋式トイレの場合、お尻が便器のフタのような状態になっているので、なおさらだ。そしてトイレットペーパーでお尻を拭いた時、お尻の菌が親指の付け根、手のひら、手首、手の甲などに付着。石鹸を使い手首まで含めて手全体を隈なく洗っている人は別として、チャチャチャッとした手先の洗いだけでは菌は落ち切らない。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2024年10月28日号より抜粋