インタビューに答える田中真紀子氏(photo 横関一浩)

 石破内閣で一番懸念されることは、総裁選前(9月27日付)に米国の保守系シンクタンク(ハドソン研究所)に型破りの寄稿(外交政策論文)をして、ホンネを漏らしていたことです。まずは国民に言わなければならないのに。

 日米安保や地位協定の改定、米国の核の持ち込み、自衛隊のグアム駐留、アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設を提言しています。

 ところが、首相になってからの所信表明演説では、この内容に一言も触れていません。むしろ、耳ざわりのよい空疎な言葉と作り笑いだけでした。

 一方で、外相も防衛相らも政調会長も。本人含めて5人が防衛相経験者ですから「本気ぶり」がわかります。「防衛オタクがオモチャで遊んでいる」と思っていたら、首相になったから核の判断もできるし、内閣では武器や兵器を現実に動かせることになりました。

──ただし、石破さんは首相就任後、こうした外交防衛構想について、ずいぶんトーンダウンしています。「アジア版NATO」については、代表質問に対する答弁でも「一朝一夕で実現するとは思っていない」と修正しています。

「台湾有事」という言葉に踊らされて、いざという事態になった場合、内局と制服組で約24万人いる防衛省関係者は一体どうなるのでしょうか?

 幸いなことに、台湾の国際社会での地位は次の通りです。

 国連は1971年に中華人民共和国に代表権を認め、台湾は国連を脱退。72年には、日本も中国を承認、台湾と外交関係はありませんが、民間が交流しています。私はこの状態でいいと考えます。

 ただ、カーター米大統領が「台湾関係法」を作って武器を台湾へ売れるようにした。ところが米国は台湾を防衛しない、ご都合主義であいまいな法律を作った。隣国の日本が中国と戦って台湾を守りなさい、ということにもなりかねない。

 石破内閣で注意をしなければいけないことは、このポイントですよ。そこが私の一番言いたいことです。

 せっかく日中国交回復をして、平和友好条約まで結んでいる、隣国中国をいらだたせることのないよう、きめ細かな外交努力が大切です。

立会演説会復活を

──総選挙に突入します。

 総選挙中に、みなさんに提案したいことがひとつあります。
「立会演説会」をぜひ復活させたいと思うんです。みんなが手を挙げて、いっぱい質問する。そうしたらね、答えられない人や、数字を間違っている候補者とか、すぐにわかりますよ。今回は間に合わないけれど。

 ネット選挙が広がりつつある今こそ、一つの会場に候補者と有権者が集まる、ネットでも参加できる、演説会を検討する時期じゃないですか。

【註】立会演説会は1983年に廃止された。組織的なヤジや代理を立てる候補者が増えて形骸化したのが理由だ。

構成 ジャーナリスト 菅沼栄一郎

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