気象庁は10日、エルニーニョ監視速報を発表しました。それによると、大気と海洋の状態はラニーニャ現象時の特徴に近づきつつあり、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりそうです。今シーズンの冬は日本海側で降雪量が多くなるなど、厳しい寒さとなる可能性があります。その後、その状態は長続きしないため、ラニーニャ現象の定義を満たす可能性と平常の状態が続く可能性は同程度です(50%)。
9月の実況
気象庁は10日、エルニーニョ監視速報を発表しました。
それによると、9月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は-0.2℃で、基準値に近い値となりました。また、ラニーニャ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の7月の値は-0.2℃で、基準値に近い値でした。
太平洋赤道域の海面水温は西部で平年より高く、中部から東部にかけて平年より低くなりました。
太平洋赤道域の海洋表層の水温は西部で平年より高い一方、中部から東部では平年より低く、中部では低温が強まりました。
太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動はほぼ平年並で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)もほぼ平年並でした。
このような大気と海洋の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られますが、ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつあることを示しています。
今後の見通し
実況では、太平洋赤道域の中部で海洋表層の冷水が強まっています。大気海洋結合モデルは、今後、太平洋赤道域の西部から中部で貿易風が強まるとともに中部の冷水がさらに強まり東進するため、エルニーニョ監視海域の海面水温が冬には基準値より低い値で推移する可能性が大きいですが、その状態は長くは続かず、大気海洋結合の弱まりとともに春にかけて上昇して基準値に近づくと予測しています。
以上のことから、今後、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりますが、その状態は長続きしないため、ラニーニャ現象の定義を満たす可能性と平常の状態が続く可能性が同程度です(50%)。
西太平洋熱帯域及びインド洋熱帯域の状況
【西太平洋熱帯域】
9月の西太平洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値でした。今後、冬にかけて基準値より高い値か基準値に近い値で推移すると予測されます。
【インド洋熱帯域】
9月のインド洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値でした。今後、冬にかけて基準値に近い値か基準値より低い値で推移すると予測されます。
今冬の寒さ・雪の予想
ラニーニャ現象が発生すると、日本付近では冬の西高東低の気圧配置が強まって、気温が低くなり、大雪になる傾向があります。気象庁の寒候期予報(9月24日発表)によると、今シーズン冬の降雪量は、北日本から西日本にかけての日本海側の地域で「平年並みか多い」予想です。強い寒気が流れ込むタイミングで、短時間のうちに大雪になるなどして交通障害が発生することも考えられます。
また、平均気温は「ほぼ平年並み」の予想ですが、西日本と東日本では平年より低くなることもあるでしょう。冬らしい寒さとなり、厚手のコートやダウンコートなどが活躍する日が多くなりそうです。
ラニーニャ現象とは?
「ラニーニャ現象」が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水がわき上がっています。
ただ、何らかの原因で東風が強まると、西側の暖かい海水が厚く蓄積するとともに、東側にわき上がる冷たい海水の勢いが強まり、南米沖の海面水温が通常より低くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象を「ラニーニャ現象」と呼びます。
「ラニーニャ(La Niña)」とは、スペイン語で女の子という意味で、「神の子キリスト」を意味する「エルニーニョ」の反対現象ということから名づけられました。