星野源(ほしの・げん)/1981年生まれ。俳優・音楽家・文筆家。2017年、第9回伊丹十三賞を受賞。約7年半ぶりのエッセイ集『いのちの車窓から 2』(KADOKAWA)が発売中(撮影/写真映像部 東川哲也)

――約7年半のあいだにコロナ禍があり、世の中の常識も変わった。自身の意識の変化や、社会通念の変化にどう合わせていくかについても触れられている。

星野:そもそも自分は「気づくと変わっていってしまう」タイプ。「変わる」って大変だし、怖いことだと思う人も多いかもしれないけれど、自分にとってはそんなに大変ではなく、むしろ「変わっていってしまうから、変わらないよう合わせていくのが大変」と言えるかもしれません。

 すべて世の中に合わせていけばいいと思っているわけではなく、かといって変わらないことに固執すればいいとも思わない。「自分を大事にできる変化」は必要で、少しでも生きやすいよう、楽しく生きていけるようにしていけばいいのかな、と。

「鬼型人間になる」

 誰かが「こうなったらいいよね」と思うことに賛同し、合わせることにより、それが結果的に自分に返ってきて暮らしが楽になることもありますよね。「アップデート」と言うと、意識が高い印象になってしまうかもしれないけれど、「自分が生きやすいよう環境を整えていく」ということなのかなと思います。

――エッセイには、星野さんならではのオリジナリティーあふれる言葉も登場する。たとえば「新曲の制作の時期は、朝型人間でなく、夜型人間でもない、鬼型人間になる」という表現。なんとも絶妙な言い回しだ。

星野:書いている途中に思いついた言葉です。起きるのが夜8時で、寝るのが昼の12時となると、もはや夜型人間とも言えないですよね。そう考えると、「じゃあ、鬼かな」と(笑)。

 既存の言葉に自分が当てはまることって、あまりないかもしれないなと感じることがあって。人間は0か100ではなく、そのあわいで生きている。「朝型」「夜型」だけでなく、分類の仕方がもう一つくらいあってもいいんじゃないかな、と。“ジャンルわけ”は、なくていいと思う半面、ある程度必要なものだけれど、本当はもう少し細かくわけてくれないと、僕は自分の居場所が見つからないんです。

 エッセイにも書きましたが、時差を考えると自分はニューヨーク時間にマッチしていることにも気づきました。書きながらそのことに気づいたときの興奮はすごかった。「自分は間違っていなかった!」と(笑)。そんなこともあるかもしれないですよね。その人にとって、生まれた場所が一番合う土地とも限らないですから。

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