AERA 2024年10月7日号より
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 定年まで働き続ける女性が増え、責任ある仕事に加え、家事や介護、育児などで多忙な日々を送る人も多い。さらに生理前後の不調、妊娠・出産、更年期障害など女性特有の悩みも。仕事との両立に苦悩する女性たちの声を聞いた。AERA 2024年10月7日号より。

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 都内に住むマスコミ勤務の女性(55)は、40代後半に差し掛かった頃から「うまく言葉で言い表せない気持ち」が心の中にあることに気づいた。結婚しているが子どもはいない。出産経験がない女性を非難する声を見聞きしたこともあり、気分がふさいだ。

 この時期に父親を亡くしたこともあり、鬱々(うつうつ)とすることが増えた。それ以前から月経が不順になり、夜中に汗をかいて起きることもあったが、汗は不快ではあっても「つらい」わけではない。病院に行くことは考えなかったという。

 しかし、メンタル面でのしんどさは仕事にも影響した。レディースクリニックの院長をしている知人に相談し、会社近くの更年期外来に通い始めた。

 だが50歳を超えた頃、部署異動を機に出社できなくなった。更年期外来に通うのをやめ、心療内科に切り替えた。4カ月ほどの休職を経て仕事に復帰したが、その後も定期的にパタッと気力が落ちてしまう。3日ほど寝込むこともあった。

 ある日、「こんな気持ちのままでいると死んでしまうかも」と怖くなり、以前とは別の更年期外来へ。そこで抗うつ剤の摂取とともにホルモン補充療法を始めたところ、2週間ほどで調子を取り戻したという。

 月経や妊娠、出産、そして閉経。女性の体は年齢とともに大きく変化していく。

女性ホルモンのゆらぎ

 京都大学医学部附属病院産科婦人科の江川美保助教によると、正常な月経がある場合、脳にある下垂体から性腺刺激ホルモンが出て卵巣を刺激し、女性ホルモンであるエストロゲンなどを分泌する。エストロゲンは子宮や胸だけでなく脳や心臓、皮膚や骨など全身の機能を調整することで女性の心と体を守ってくれるものだ。

 閉経の前後10年間ほどを指す更年期にはエストロゲンの分泌が大幅にゆらぎ、やがて減ることでさまざまな症状があらわれ日常生活に支障をきたすことがある。中には仕事との両立に悩み、退職する人も珍しくない。

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損失の理由は欠勤、パフォーマンス低下そして離職