「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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SDGs(持続可能な開発目標)の一つでもある「脱炭素社会へ」。ローソンでは1店舗当たりのCO2排出量を2013年対比で30年に50%削減、50年には100%削減を掲げています。
ただ痛感しているのは、本当に「50年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)」を目指すなら、私たちの努力と工夫に加えてお客様のご協力が不可欠だということです。
そこで、太陽光パネルや、店内の冷蔵・冷凍商品のオープンケースへの扉設置などにより、13年度対比で電気使用量を40%、CO2排出量を55%削減する設計の「省電力店舗」を神奈川県川崎市で始めています。
検証を続けて、24年3月以降に新店での標準化を目指しています。
実は、サンドイッチやお総菜が置いてある「オープンケース」に扉などをつければ圧倒的に店舗の電気使用量が下がることは、以前からわかっていました。
でも、フタや扉がないケースには「商品が取りやすい」という利便性がある。
以前、ケースにフタを付けてみたところ、売り上げが落ちました。
お客様が商品を手に取るまでにワンステップ手間が加わることで、利便性が下がってしまったわけです。結局、取り組みは大きく広がりませんでした。
でもカーボンニュートラルの実現のためには、店舗の電気使用量を下げることは必須。「ガラスの扉をつけることで、CO2が削減できます。ご協力をお願いいたします」といったPOPの設置や、お客様がフタを開けてくださることで、CO2排出量が減らせますよ──そんな会話をするなど、お客様とのさらに密なコミュニケーションで、目標達成へとつなげていきたいと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2023年4月17日号