人気ブログ「デマこいてんじゃねえ!」が本になった。少子化や世代間格差、働きかたなど、現代の若者が直面するテーマについて、「1985年東京都生まれ」以外のプロフィルを明かさない著者の鋭いメッセージが詰まっている。
 日本の少子化の原因を考察した章では、少子化を経験したOECDやアジア諸国のデータを参照し、その原因とされる女性の社会進出や識字率向上は、少子化傾向とあまり関係がないと指摘する。多くの国で先立って起きていたのは、乳児死亡率の低下だった。では、あえて子どもを少ししか残さないという、一見不自然な人間の行動の理由は何か。人間の生殖パターンや生産手段の変化を軸に、SF的想像力を駆使して結論を導いていく。
 その一方、仕事や出産に悩む友人たちとの会話を引き、「いい人生」や「正しい生き方」をめぐる思索を小説のような文体で綴る章もある。一貫するのは、個人や社会にとって実現可能な解決策を示そうとする姿勢だ。このままでは現役世代がつぶれてしまうという危機感と、同世代へのエールが伝わってくる。

週刊朝日 2016年4月29日号

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