現在のMIOさん(撮影/写真映像部・上田泰世)

「普通、子どもは『頭脳』と『心』を交互に行き来することで育っていくものだと思うのですが、私の場合は『頭脳』だけが最初からあって、しかも『心』があまり育たない環境にいました。それが悪いように作用していったのだと思います。親にとっての理想の自分になろうとしたり、周囲に好かれようとして偽りの自分を演じるうちに、だんだんと“本当の自分”がわからなくなっていきました」

 世間ではギフテッドに関して、「自分の興味のあることに邁進し、周囲からはどう思われるかを一切気にしない人」といったイメージを持たれることがある。もちろん、そういった人もギフテッドも存在するが、一方でMIOさんのように周囲になじもうとしすぎて、消耗したり、自分を見失ってしまう人も少なくない。「過剰適応」と呼ばれる現象だ。

 ただ、そんな中でも、すてきな出会いもあった。中学受験して入った私立中学校の写真部で、2歳年上の、気の合う女性と出会ったのだ。

「初めて他者に本音を話せました。お互いに好きなものが似ていて仲良くなったんですが、彼女はブッダのような、すべてを受け入れてくれる子でした。もう2人だけの世界でしたね。『彼女が認めてくれるなら、もうそれでいい』という気持ちを初めて経験しました。悩み自体は解決できなくても、そこまで話を聞いてくれる人もいなかったので、当時はそれで満足でした」

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「ほかの子と違うのはいいことだ。個性だ」