否定されたらまず闘う
安藤:既存の歴史的建築に、コンクリートのシリンダーを挿入しました。今、アーティストによるインスタレーションで、床が全部ステンレスの鏡になっているから、天井も映るんです。そこに人間が立つとまた違った見え方になってすごく面白いですよ。
MEGUMI:は~! すてきです。
安藤:仕事を進めるなかでフランスの人たちとも当然意見を交わしますが、何を言っているのか全然わからない。それに「イエス、イエス」って返しているうちに、相手も諦めて、意図をくみ取ってくれるんです。
MEGUMI:ふふふ。
安藤:MEGUMIさんも、自分のいいところを生かさないといけないですよ。「外国語をしゃべれない」ことも時にメリットとして生かすことができる。後はね、問題を恐れず前に進み続けることです。
MEGUMI:どういうことですか?
安藤:韓国でサムスンの美術館を作りましたが、その前にはLGのアートセンターを手がけていました。韓国は企業同士の競争が激しいので、大丈夫なのかと思う人もいましたが、問題は起きなかった。人生は一回きりですから、待っているだけではダメなんです。
MEGUMI:そういうふうにやってこられたんですね。
安藤:日本の企業は年功序列があったり、学歴が重視されたりします。少しずつ減っているかもしれませんが、やっぱり団体で生きる習慣がついています。でもね、一人ずつが頑張って生きて、個人を持つことも大事だと思うんです。女優さんもそうじゃないですか。「私はこう思う」と主張できるほうがいい。あんまりしすぎると変わった人だと思われるかもしれませんが……。
MEGUMI:自己主張をすることで傷ついたり、世の中にたたかれるのではないかと不安になって怖気づいてしまったりすることもあります。先生はそういった不安はありませんか?
安藤:ないんです。もし誰かに否定されたら、まず闘う。闘うことで話が発展するでしょう。ろくなことを考えていないと思われても、やり抜くんです。「暴走族」ですから。
MEGUMI:かっこいいです!
(構成/編集部・福井しほ)
※AERA 2024年9月16日号