"ウサギとカメ"、"北風と太陽"、"アリとキリギリス"、"オオカミと少年"、"裸の王様"、"金の斧、銀の斧"、"みにくいアヒルの子"、"浦島太郎"、"こぶとり爺さん"、"桃太郎"、"鶴の恩返し"、"わらしべ長者"、"さるかに合戦"、"花咲か爺さん"をはじめとする、イソップ童話、アンデルセン童話、グリム童話そして日本の昔話の数々。ともすれば子どもたちのためのお話だと思いがちの、こうした童話や昔話。しかし、そこにはビジネスで成功するための沢山の教えが潜んでいるのだといいます。



 20年以上に渡り、起業家や経営者、科学者、映画監督、スポーツ選手、作家、タレントといった3000人以上もの一流の人たちに取材をしてきたという上阪徹さん。取材を進めていくなかで上阪さんは、成功者たちへの取材で得た学びとまったく同じ教えが、童話や昔話にストレートに伝えられていたことに気がついたといいます。



 本書『ビジネスマンのための新しい童話の読みかた』では、冒頭の作品を含む35の童話や昔話を題材に、著者の上阪さんがビジネスシーンでも使える成功への鍵を解説していきます。



 たとえば"桃太郎"。桃から生まれた桃太郎が、イヌとサルとキジを家来とし、鬼ヶ島に鬼退治に向かうという誰しもが知っている有名な昔話ですが、ここで上阪さんは桃太郎のリーダーシップ、つまりなぜイヌとサルとキジは、鬼退治という難事業に賛同したのかに注目します。



 桃太郎が家来を作ることができた理由。そこには、日本一のきびだんごがもらえるという報酬以上に、悪い鬼をやっつけて村人の宝を取り戻すという共感できる志があったからだと指摘します。



 実際、上阪さんが取材をするなかでも、人をマネジメントする上での最も重要なものとして、ビジョンの存在を掲げる経営者は多かったといいます。さらに、そのビジョンは私利私欲につながるものではなく、世の中を変えたい、社会をもっといいものにしたい、便利にしたい、人を笑顔にしたいといった、みんなの利益、社会の利益につながるものだったそう。



 桃太郎においても、桃太郎がもし自分で財宝をもらうため、名を上げるため、自分が立派になるためといった私利私欲につながるビジョンを掲げていたのだとしたら、家来を作ることができたかは疑わしいと指摘。きびだんごというインセンティブと共に、鬼退治というやりがいの感じられるプロジェクトであったからこそ、イヌたちは桃太郎についていったのではないかと分析します。



 成功者の思考と共通する、童話や昔話の教え。大人になって改めて読み返してみると、子どもの頃には気がつかなかった新たな視点を発見できるかもしれません。