インタビューに応じる石破茂氏

――岸田文雄首相は「聞く力」をアピールしました。石破さんがアピールできることは何でしょうか。

「聞く力」と共に「語る力」だと思っています。

 私が当選した当初、1年生議員はみんな、国会対策委員を経験しました。その時に、竹下さん(元首相の竹下登氏)など「国対の神様」といわれた先達から聞かされたのは、「野党に賛成してもらうのは無理でも、納得してもらえ」ということでした。それが「語る力」。なんでこういうこと言ってんだろうということを納得してもらうことです。小泉純一郎内閣で、防衛庁長官として初入閣し、有事法制を手がけたときの経験が私の中には生きています。

――有事法制は戦争法案だと言われ、反対の多い法案でした。

 はい。ですからまず、有事法制は有事において自衛隊が迅速的確に行動するための法律であり、民間人を戦場に置かないための法律であるという説明から始めました。そして、だんだんと理解を広げていき、最後は野党も含め圧倒的な多数で成立させてもらえた。大切なのは、対立の構図ではなく、納得の構図だと思います。

――最後に、石破さんと言えば、永田町屈指の「鉄オタ」です。地方の赤字ローカル鉄道問題についてどう考えていますか。

 基本は(施設の保有と運営とを分ける)上下分離でしょう。

 公共交通のなかで、すべてのコストを民間に負わせているのは鉄道だけです。バス会社に道路をつくれとか、航空会社に空港をつくれとは言いません。同じ公共交通として、イコールフッティング(対等な競争条件)と言えるのか、経済の在り方として正しいのかという点は疑問です。

 鉄道マニアだから何が何でもローカル鉄道を残せと言っているわけではありません。鉄道は、エネルギー効率が非常によく、環境に与える負荷が少ない。そして、少ない人数で運行できるという、現代的なメリットがあります。それを最大限に生かしているかという観点から、ローカル鉄道を論じるべきものだと思っています。

(構成/編集部 野村昌二)

※AERA 2024年9月9日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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