
8月28日に開幕するパリ・パラリンピック2024。プロ車いすテニスプレーヤーの小田凱人さん(18)が、世界ランキング2位で迎える初の大舞台で「楽しさ」を追い求めて躍動する。AERA 2024年9月2日号より。
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自己プロデュースが得意だ。
車いすテニスの4大大会で次々と「最年少記録」を塗り替え、知名度が上がるにつれ、メディアの取材も急増した。
テレビならどのような番組なのか、活字媒体ならどんな媒体なのか。自分なりのイメージを持って撮影に挑む。
受け身の防御型ではなく、果敢にネットに詰める攻撃型のテニススタイルと重なる。
4月、本誌「現代の肖像」の撮影で、岐阜県の練習コートを訪ねたときのことだ。3年前の東京パラリンピックのとき、小田にとって憧れの存在であり続ける車いすテニスのレジェンド、国枝慎吾さんが「現代の肖像」に登場した。
そのときの掲載号を見せると言った。
「じゃあ、国枝さんとかぶるポーズだと良くないですよね」
競技用の車いすに乗って、ジャンプをするカットをフォトグラファーに提案した。
前例踏襲はつまらない。常に、何か革新的なことに挑みたい。
この18歳には、芯がある。
パリ・パラリンピックの開幕が8月28日に迫ってきた。
「前哨戦」といえる4大大会、全仏オープンは1セットも落とさずに連覇を達成した。舞台は赤土の同じローランギャロス。
堂々の金メダル候補として注目を浴びる。
「テニスが楽しくてやっている。仕事みたいな感じでいるのは好きじゃない」
そこに、悲壮感は漂わない。
「趣味の延長線上でこれからもやっていきたいし、それはずっと変わることなく、そのポジションで居続けたい。逆に、それが変わったら引き際かと思っている」
予定調和に抗い、あくまで自分のスタイルを模索し、貫く。何よりも楽しむ。撮影も、テニスも、そして人生も。(朝日新聞編集委員・稲垣康介)
※AERA 2024年9月2日号