秋の米大統領選に向けて、副大統領候補として民主党からティム・ウォルズ・ミネソタ州知事、共和党からはJ・D・バンス上院議員が指名された。多くの米国民にとって未知数の2人のどちらが、11月の投開票日に勝利するカギになれるのか。AERA 2024年9月2日号より。
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副大統領候補というのは、全国的な知名度がない場合が多い。その意味では、ニューヨーク・タイムズも推薦したベストセラーを出したバンス氏の方が、やや有利ではある。一方で、ウォルズ氏は知名度こそなかったものの、わずか数週間で民主党の中で確たる地位を築いた。
8年前、トランプ氏と接戦を繰り広げ、得票数では上回っていたものの獲得選挙人数で下回り落選したヒラリー・クリントン氏は当時、ティム・ケイン元バージニア州知事(現上院議員)を副大統領候補に選んだ。しかし、元州知事で知名度もなく、カリスマ性もなかった。民主党支持者が「なぜあの時、ケインだったんだ」と嘆くのを今でも聞くことがある。それほどに副大統領候補は、大統領候補を支え、さらに輝かせてみせる重要な役割といえる。
女性大統領誕生するか
バラク・オバマ元大統領は08年、現大統領のジョー・バイデン氏を副大統領候補に選んだ。バイデン氏は、上院議員歴が長かった上、オバマ氏との仲の良さを見せる「ブロマンス(ブラザーとロマンスを掛け合わせた造語)」で、選挙戦を盛り上げた。
果たしてハリス氏は、ウォルズ氏のフットボールコーチ風サポートで勝てるのか。また、16年のクリントン氏の敗北を考えると、米国は今回「女性大統領」を生む準備はできているのか。米公共放送PBSテレビにインタビューされたエリザベス・ウォーレン上院議員は、こう答えた。
「今は、2016年と異なる。ウォルズ氏とのコンビで米国をリードすることができる」
過激さを印象付けるバンス氏と、コーチのようにサポートするウォルズ氏。まるで「北風と太陽」のような対照的な2人だが、どちらが次期副大統領になるのかは、まだ混沌(こんとん)としている。
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると8月22日現在、トランプ氏の支持率は46.7%、ハリス氏は48.2%とわずか1.5ポイントの差だ。激戦州7州(アリゾナ、ネバダ、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア)のうち、5州でトランプ氏がリードし、残りの2州でハリス氏がリードしている。(ジャーナリスト・津山恵子=シカゴ)
※AERA 2024年9月2日号より抜粋