
「コンビニ百里の道をゆく」は、ローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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8月も残りわずか。子どもたちは夏休みも終盤ですね。こなせていない宿題に焦っている人もいるかもしれません。
夏休みの宿題と言えば、私は興味のあることを掘り下げて調べる「自由研究」がとくに思い出に残っています。
あるときはカブトムシやクワガタについて研究をと思い立ち、まずは近所にあった水月公園というところに果物の餌を仕掛けたうえで、朝のうちに公園に出かけて捕獲しようとしました。でも、捕れた試しがありませんでした。
あるときはセミの幼虫が土から出てきて木に登り、殻から脱皮してセミになっていく様子を観察しようと思い立ちました。でも、脱皮した後の殻は見つけられるのですが肝心の幼虫はいちども見つけることができず、「抜け殻の研究」になってしまった(笑)。つまり、自由研究でうまくいった記憶があまりないんです。
後から知るのですが、カブトムシやクワガタを捕りやすいのは夜明け前。朝、明るくなってから捕りにいったのでは遅いんですよね。セミも土の中の幼虫が成長して地上に出てくるのは朝早いうち。日が高くなってから探しても、そりゃ殻しか見つかりません。
失敗と言えば失敗です。でもそこから学べることもあった。「いちどはやってみること」ってやはり大事です。
とくに当時はインターネットもなく、「やってみて失敗」しないことには、自分が持っている仮説や選択肢が狭まっていかなかったんです。

仕事も同じです。本を読めば学術的な意味でのマーケティングについて解説はしてくれています。でもやはり自分でやってみて失敗しないと、見えない未来に向かってチャレンジしていく中で実際に新しいアイデアが浮かんでくることはないように思います。
子どもたちには宿題の自由研究を通じて、「失敗するという学び」をぜひ、経験してもらえたらと思いますね。
※AERA 2024年9月2日号