3月26日に北海道新幹線が開業し、新幹線が函館までつながります。旅番組や旅行ガイドを見ると、函館は異国情緒あふれる街で、海産物と乳製品がおいしくて、温泉旅館が建ち並び、函館山からの夜景が美しい…というイメージでしょうか。でも、もう少し掘り下げて、ガイドブックの端っこにしか載っていないような、ちょっと不思議な函館の“小ネタ”をご紹介します。
この記事の写真をすべて見る市電の停留所 「函館どつく前」。函館は、何かをどつくのでしょうか?
函館の市電には「函館どつく前」という停留所があります。終点なので、車体の前方に「函館どつく前行き」と表示されます。この表示をパッと見て、「えっ? 函館って、何かをどつくの? どつく前に、何かをするの?」と思う観光客も(たまに)いるそうです。
これは、ご想像の通り、「どつく」と書いて「ドック」と読みます。函館市民は何の疑問もなく、これを「函館ドック前」と読みますが、見慣れない方にとっては、一瞬、「どつく」って何だ? と思われるかもしれません。
「函館どつく」の正式名称は函館どつく株式会社。函館に古くからある造船メーカーです。明治29年(1896)に函館船渠株式会社として創立され、昭和26年(1951)に社名を函館ドック株式会社に変更しました。 函館山の北のふもとにあり、市電の終点の停留所にその名が使われているので、市電に乗るとき、市民は「ドック行きに乗る」「ドック行きが来た」といった言い方をします。
その後、昭和59年(1984)に社名を函館どつく株式会社に変更し、停留所名も「どつく」と変わりました。しかし、「ドック」という呼び方は今も定着しています。
やき鳥=豚串。「やき鳥ください」と注文すると、「豚にしますか。鳥にしますか」と聞かれる。
そもそも、やき鳥なのだから、串に刺さっているのは鶏肉のはずですが、函館をはじめ道南では、やき鳥といえば、四角くカットされた豚肉の串焼きのことを指します。なぜ、道南地区では「豚肉のやき鳥」が一般的なのか、はっきりとした理由はわかりません。が、古くから養豚場が多く、鶏肉より豚肉のほうが安くて手に入りやすかったことが一番の理由ではないかといわれています。
そんな「豚肉のやき鳥」が、ごはんと海苔の上にのっているのが、B級グルメでおなじみの「やきとり弁当」です。函館出身のGLAYが、この、ハセガワストアの「やきとり弁当」が好物であると言ってから、さらに火がつき、今では函館に訪れる観光客に広く知れわたっているお弁当です。焼いているときに、かくし味として「はこだてわいん」をシュッと吹きかけるのが、味の秘密です。
お祭りやイベントではよく、やき鳥の屋台が出ますが、メニューを見ると函館では、「精肉」と「とり」の2種類です。「精肉」は四角くカットした豚肉の串焼きで、「とり」は鶏肉の串焼きです。
函館のスーパーの肉売り場では、串に刺さった状態の、焼く前のやき鳥が売られていますが、そのほとんどが四角くカットされた豚肉の串刺しで、それらが「やき鳥」として並んでいます。
やき鳥=豚串…。函館市民は鶏肉と豚肉の区別がつかないわけではありませんが、どうして豚肉の串焼きを「やき鳥」と呼ぶのか、その理由は謎のままです。
JR五稜郭駅で降りても、星形の五稜郭公園やタワーは近くにありません。
JR五稜郭駅は、函館駅の隣の駅です。その「五稜郭」という駅名を信じて、星形の五稜郭公園に行こうと勘違いし、何人の観光客がこの駅で降りたことでしょう。しかし、残念ながら、五稜郭駅の近くに五稜郭公園はありません。公園までは3.5km以上も離れていて、歩くと1時間、車を利用しても20分ほどかかってしまいます。
五稜郭駅は、江差方面行きと札幌方面行きの分岐点です。函館駅の隣の駅ですが、特急列車も停まります。この駅にはJRの貨物の駅や車両基地、操作場などがあるので、鉄道好きの方には飽きないポイントかもしれませんが、駅近辺は観光地らしいものは何もありません。また、五稜郭公園やベイエリア、湯の川温泉など、観光地へ行くためのアクセスも、あまりよくありません。
もし、星形の五稜郭公園に行くのなら、JR五稜郭駅で降りず、JR函館駅で降りて市電に乗り換え、「五稜郭公園前」という停留所で降りると、徒歩で公園に行くことができます。
五稜郭公園は桜の名所でもあります。函館はだいたい4月下旬から桜が咲きはじめるので、お花見もおすすめです。
銭湯のほとんどが温泉。露天風呂もサウナも泡風呂もあるのに銭湯価格という、ぜいたくな風呂事情。
函館には30以上の銭湯がありますが、そのほとんどが天然の温泉です。質がよく、湯量が多いので、源泉かけ流しの温泉です。そんなぜいたくな温泉なのですが、銭湯なので、ほとんどが400円~500円で入ることができます。
そんな温泉銭湯は、ドラマ「時間ですよ」のような、昔ながらの番台スタイルの銭湯もありますが、ほとんどはコミュニティ銭湯のように、休憩所を兼ねた広いスペースに受け付けカウンターがあり、男湯と女湯の入り口が分かれいるスタイルです。浴室にはサウナがあり、露天風呂があり、泡風呂や薬湯風呂、打たせ湯、ミストサウナなどがあります。湯船が1種類しかない温泉はほとんどありません。
休憩スペースには座敷やソファがあり、大型テレビやマッサージ椅子があります。風呂上がりに野球や相撲観戦をしながら、ゆったりとコーヒー牛乳を飲むことができます。館内には食堂をはじめ、有料の整体やマッサージルームがある温泉もあります。
函館では温泉旅館に泊まってゆっくり温泉につかることもできますが、レンタカーなどで周る場合などは、温泉銭湯で湯めぐりを楽しむことも一興です。
函館市内のほかにも、道南一帯は温泉の宝庫で、そのどれもが400~500円で入ることができます。なかには、車で山奥に行かなければ入ることができない「秘湯」もあるので、ドライブの途中に温泉に入るのもいいかもしれませんね。
3月26日、いよいよ北海道新幹線が開通します。あちこちで函館が取り上げられる機会が増えていますが、メディアに大々的にのらないような、函館のちょっとした“小ネタ”を取り上げてみました。
(日本地図で函館の位置を正確に指し示すことができますか? 自信のない方は、下記のリンク先「渡島半島を函館だと思ってはいませんか」をご覧ください)。