AERA 2024年8月26日号より

 一方、円安になればなるほど、物価上昇圧力は強くなって日本中の消費者は困る。特に食料やエネルギーは輸入に頼っているから、スーパーの輸入牛肉は高くなり、猛暑でエアコンをつけようと思っても電気代が馬鹿にならない。

 外貨投資をする余裕がある人の金融資産は増え、一般消費者の生活は物価高で困窮する。格差はますます広がる。

 そうした状況のなか、消費者を守るために日本銀行は予想外の利上げを決断した。たかだか0.25%だが、植田和男・日銀総裁が今後の利上げに対して積極的な姿勢を見せたことも大きい。

 一段の物価高がひとまずは遠のいたことで消費者にとってはありがたいが、新NISAで外貨投資を始めた人からの恨み節も聞こえてくる。

 この1カ月の円高は、日銀の利上げだけでなく財務省による5.5兆円規模のドル売り介入の影響も大きい。円安に振れすぎた相場に冷水を浴びせようと7月中旬に介入したと言われている。

 結果だけ見ると、政府が「貯蓄から投資へ」の政策によって、NISAで個人の外貨購入を促進した結果、ドルが上昇。その後、政府自身が保有するドルを高値で売って儲けたとも受け取れる。もちろん政府が意図的に行っているわけではないが、やっていることがあまりにもチグハグだ。

田内学(たうち・まなぶ)/1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

AERA 2024年8月26日号

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