小松大谷・石浦(撮影/写真映像部・松永卓也)

 思えば10年前。2014年夏の石川大会決勝で、小松大谷は8点リードで迎えた9回裏に星稜の怒涛の攻撃にあい、サヨナラ負けで甲子園出場を逃した。2012年からチームを率いる小松大谷の西野監督にとって、その高校球史に残る大逆転劇は忘れられない記憶だ。

「あの試合はチームの宝として練習しています」

 ゲームセットの瞬間まで何が起きるかわからない――。そのことを、身を持って知る西野監督は智弁学園戦でも選手たちの力を信じ続けた。

「最後まで諦めずに戦ってくれたと思います」

小松大谷・東野(撮影/写真映像部・松永卓也)

 2回表に一時は勝ち越し打となる左前適時打を放った1番・山崎悠太は、松井秀喜氏(元・ヤンキースなど)を輩出した石川県の根上中学校の出身だ。「星稜を倒して甲子園に行きたい」。小学生の頃、14年夏の「小松大谷vs.星稜」をテレビで観たのがきっかけで進学先を決めた。今夏、石川大会決勝で星稜を破って甲子園に出場。そして、明豊と大阪桐蔭、ともに甲子園の常連校を破って3回戦に進んだ。智弁学園に敗れて「悔しい」。ただ一方で、山崎は確かな口調でこう言い切るのだ。

「小松大谷で野球ができてよかった」

 涙の奥で、充実した日々をかみ締めた。

試合終了後の両校の選手たち(撮影/写真映像部・松永卓也)

(佐々木 亨)

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