もし離婚したら「ペアローン」はどうなる?

 2つ目のリスクが、購入後の「離婚」だ。離婚率は年々上がる傾向で、直近20年ほどの特殊離婚率は約35%だ。3組に1組が離婚すると考えれば、購入時には円満な関係でも、返済期間中に離婚する可能性は十分ある。

 ペアローンはお互いが連帯保証人になるのが前提で、共有名義となる。そのため、物件を売却などしない限り、離婚後も連帯保証人は解消できない。また、売却する場合も賃貸に出す場合にも、双方の合意が必要になる。

「ペアローンで購入した物件に、離婚後も夫婦どちらかが住み続けるなら、単独ローンに切り替える必要があります。夫婦2人の収入を基準にローンを組んでいれば、単独で返済を続けるのは困難なケースが少なくありません。売却するにしても、価格が高いタイミングで売却できるとは限らず、ローン残高を返済できない可能性もあります」(同)

 3つ目のリスクが、配偶者との「死別」だ。単独ローンの場合、契約者が死亡すると、保険で住宅ローンが完済される。だが、ペアローンの場合は一般的に、どちらかが死亡しても、もう片方のローンは残るため、返済を続けなければならない。

「相続が発生した場合、子どもがいないと、配偶者の親族と共有名義になる可能性もあります。今後はこうした『想定外の事態』に関するトラブルも増えてくるかもしれません」(同)

上限ギリギリで組んだ「ペアローン」の影響は

 ペアローンを組む夫婦の増加が、今後、どのような事態を引き起こすのか――。

 上限ギリギリで組んだペアローンが、「相対的な消費を冷え込ませている」と指摘する声もある。前回の記事のA子さんは、旅行や外食を控えるなど、以前より生活費を切り詰めることになった。

「ローンのために他の消費を諦める。あるいは子どもを持つことを諦めるといった影響も考えられます。つまり、ペアローンを組むことにより、人生の送り方が決まってしまう側面もある。よく考えることが必要です」(東京カンテイ・井出武さん)

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低金利時代に不動産価格は上昇する傾向だが