最後の夏、大阪大会の決勝でライバルの履正社に惜敗した。誰より悔しいはずであるのに、それを押し殺して気丈に振る舞っていた姿が印象に残る。そして、高校日本代表の一員としてU18野球W杯に臨み、初の世界一の立役者となった。
「大阪で負けて初めて“甲子園がすべてじゃない”と思えました。もちろん、出場できるに越したことはないけど、何より大事なのは甲子園を目指す過程ですよね。流した汗は決して消えないと思うし、高校野球を“やりきった”と思えることがその後の人生の財産になる。同じように神奈川大会決勝で負けた横浜高校の緒方漣(現・国学院大)ともそんな話をして、W杯には臨みました」
ドラフト1位で入団したソフトバンクでは、6月15日の2軍戦で初勝利を挙げた。四隅を突く制球力に加え、打者の手元で突然失速するチェンジアップが、プロが相手でも大きな武器となっている。
「初勝利はうれしかったですけど、プロでやっていける自信というのが、まだ完璧にあるわけじゃない。試合で投げることで見つかる課題を潰しながらもっとレベルアップする必要性を感じています。今は体を大きくしながら、その大きくなった分、現状のMAX148キロから150キロ台にまで球速をアップできるようなトレーニングを心がけています」
パ・リーグを独走する1軍から声がかかる日も近いはずだ。
(柳川悠二)
※AERA増刊「甲子園2024」から