桜井は、U-18日本代表候補合宿にも招集された鶴岡東のエース左腕だ。聖光学院にとっては、好投手を攻略することが勝利の大前提だった。試合序盤、その桜井に2死二、三塁から左前適時打を浴びて2点を先制された聖光学院は、7回裏まで無得点が続いた。8回裏に内野ゴロの間に1点を返すも、勝負所での一打を欠いた。1点差のゲーム。東北対決となった初戦をものにした鶴岡東の佐藤俊監督は「予想通りに粘り強く、聖光学院さんのプレッシャーを感じながら戦った」と言いながら、こう言葉を加えた。
「チャンスもピンチも同じようにくるだろうと思っていましたが、選手を信じていた」
初戦の同地区対決について訊ねると、聖光学院の斎藤智也監督は言葉に深みを持たした。
「いやあ……ずっと負けてばかりいたので……今日は4度目の正直だと思っていたんですけどね。試合を動かすのが遅かった」
斎藤監督は、タイムリーの有無の差を勝敗のポイントに挙げる。「タイムリーが出ていれば、ウチのリズムになっていたと思う」と8回裏の攻撃を悔いるのだ。そして、チームの色を熟知する鶴岡東をこう評した。
「東北地区では隙のなさ、野球の細かさは随一のチームになりつつあるなとずっと見ていた。攻撃もそうですが、今日の試合でのピッチングと配球が鶴岡東の野球」
2年ぶりに2回戦進出を決めた鶴岡東に対して、聖光学院は今夏、春夏通算での甲子園30勝目を逃した。
(佐々木 亨)
※AERAオンライン限定記事