ではどういう人なのかというと、一言でまとめるなら「セルフプロデュースの天才」である。自分をどう見せれば良いのかということを緻密に計算して、戦略を立てて、実行する。自己完結型のクレバーな職人という感じがした。

 もちろん、もともとフワちゃんという人間にはある種の危なっかしさはあった。好き嫌いの分かれる芸風であり、アンチも多かったに違いない。

 それでも、自分のイメージを巧みにコントロールして、ギリギリのところで道を踏み外さないようにする。そのバランス感覚に秀でているところが、彼女の本当の強みだったのではないかと思う。

 だからこそ、今回の騒動は彼女にとって致命傷だった。ギリギリのところでうまくやるというのを売りにしていたのに、そこで過ちを犯してしまったからだ。いわば、得意科目で赤点を取ってしまったようなものだ。

 どちらかというと、フワちゃんは言葉遣いにこだわるタイプの人間である。だからこそ、今回の件は単なるうっかりミスでは済まされない。

 8月8日にフワちゃんから発表された謝罪文によると、あの暴言を投稿してしまったのは、スマホの誤操作によるものだという。しかし、ああいうものが世の中に出ると、彼女自身があの内容を一度は問題ないと判断したというふうに思われてしまう。

なぜこんな判断ミスを

 騒動が起こった当初、個人的には暴言そのものよりも、セルフプロデュースの天才がなぜこんな判断ミスをしてしまったのか、ということに驚いた。

 フワちゃんの前途は多難である。地上波テレビに復帰するのは相当厳しいだろう。ここで原点に帰ってYouTuberに専念するというのも1つの道ではないかと思う。

 彼女はYouTuberであることを売りにしてテレビに出ていたが、メディアの仕事が増えてきてからは、ほとんどYouTubeチャンネルの動画を更新しなくなっていた。いったん腰を据えて真剣に動画を作ってみるというのも悪くはないのではないか。

 動画を作成するにはそれなりに時間も手間もかかる。何かを思いついたらその場ですぐに投稿できるXのようなSNSとは違って、うかつなミスをしてしまう心配はない。持ち前のセンスを生かして、じっくり作品づくりに向き合ってもらいたい。

 フワちゃんとは、あらゆる方向に光を放つエネルギーの塊である。仕事が際限なく増えていったことで、良くも悪くも彼女の光はあちこちに拡散していった。

 今回のことでメディアの仕事が減ってしまうのなら、そのときこそYouTuberとしてのフワちゃんが本領を発揮するチャンスだ。散らばる光を1つにまとめて、YouTubeという場所に一点集中したとき、そこで何が生まれるのか楽しみだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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