ラングレー社長:栗原淳徳さん(くりはら・あつのり)/1982年生まれ、東京都出身。2010年にナイトブラ、コスメ、食品などを扱うラングレーを創業。社員が、楽しく明るく働きながら成長できる会社作りを目指す(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年8月12日-19日合併号にはラングレー 社長 栗原淳徳さんが登場した。

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 一日中身につけるものだから、着心地の良さは譲れない。でも、胸のラインを美しく整えてくれる機能は外せない──。両方を実現しようと、こだわり抜いて作り上げたのが「BAMBI WATER」のウェアシリーズだ。

 2020年に初めて発売した「スタイルナイトブラ」はパッドの改良だけで70回ほど修正を重ねた。素材やサイズのバランスにこだわり、試作したサンプルは約30着に及ぶ。縫製工場にミリ単位の微調整を依頼するたびに、「誤差の範囲だ」と突き返されそうになった。

「それでも決して妥協しませんでした。ほんの数ミリの縫製のずれが、着心地の良し悪しにつながるんです。『こんなのを探していた』と言ってもらえるものを作るのが私たちの使命です」

 この揺るぎない信念が作り上げた「スタイルナイトブラ」はECサイト「楽天市場」で最も売れたアイテムを表彰する「楽天年間ランキング」のジャンル賞「インナー・下着・ナイトウェア部門」で2年連続1位を受賞した。カップインキャミソールなどの新商品も順調に売り上げを伸ばしている。

 よりよい商品を作るために社内で徹底していることが二つある。一つは顧客の声を漏らさず吸い上げることだ。商品へのレビューには全社員が必ず目を通す。自社、他社の商品に対する顧客の声からニーズを読み取り、すでにある商品の改良や新商品の開発につなげる。

「商品を発売したら、その商品に対するお客様の声を確認し、次の納品分には改良点を反映させます。このスピード感こそが、ブランドとお客様の信頼関係を築いているのだと思います」

 もう一つは社員の声を大切にすることだ。社員の9割を占める女性に試作品を着用してもらい、率直な意見を聞く。「ゴムの締め付けが強すぎる」「脇の部分が少し痛い」。試着したら感じたことを遠慮なく評価してもらい、気になる点は次の試作品で改良する。

「私は社長ではあるものの男性なので、お客様と女性社員の声を誠実に聞くことを一番大切にしています」

 これまではネット通販に特化してきたが、今後は実店舗での販売も予定している。海外への展開も視野に市場を広げたい考えだ。(ライター・浴野朝香)

AERA 2024年8月12日-19日合併号