相続は「親任せ」にしないほうがいいという。まずは「今、親が亡くなったらどうなるか」現状把握から取りかかりたい。AERA 2024年8月5日号より。
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高齢化で「多死社会」になりつつある日本、どうやらそのペースは加速しつつあるようだ。国税庁の「相続税の申告事績の概要」から拾ったグラフをご覧いただきたい。死亡者数を表す被相続人数は130万人台で微増が続いていたのが令和に入った2019年以降は急増。22年には157万人に達している。
一方、これ以上相続財産があると相続税が課税される基準を示す「基礎控除」が15年に大幅に引き下げられ、相続税がそれ以前に比べて身近な存在になった。課税世帯のシェアを示す課税割合は同年、それまでの4%台から8%にほぼ倍増。その後もじわじわと増え続け22年には9.6%とフタケタ台が見えてきている(別掲のグラフ)。とりわけ東京都は全国の数字のほぼ倍で、同年に18.7%を記録(同)。地価高騰もあって、今や「東京で持ち家があれば基礎控除は超えてしまう」とされるほどだ。
とはいえ、まだまだ大部分の世帯は相続税とは無縁である。ただし、「夢相続」代表で相続実務士の曽根恵子さんによると、「ウチはそんなに財産がないから……」と相続を意識しないでいると痛い目に遭うという。
親が70代になったら
「相続税がかかる世帯は節税対策が必要になりますが、かからない世帯は何もしなくてもいいかというとそんなことはありません。財産を引き継ぐ『相続』という手続きはどのご家庭でも必要だからです。そしてどのご家庭でも『揉めない対策』が欠かせません」
「ウチに限って……」と思っている方に、もう一つ統計をご紹介しよう(円グラフ)。相続を家庭裁判所で争ったケースを遺産総額の金額で分類したものだ。それによると「1000万円超~5000万円」がもっとも多く43.5%、「1000万円以下」33.9%がこれに続く。遺産総額5000万円以下が実に8割近くを占めており、要するに遺産総額が少ないほど揉めるケースが多いのである。