「相続対策は親が生きている間に行わないといけませんが、親世代に任せておくと『何の問題もない』と思っておられるようで、何も前に進まなくなります。親の相続は子供世代が動く必要があります」(曽根さん)
目安として親が70代に入ったら対策を考え始めるべきと言う。
「仕事をリタイアして財産が固まるのがその年代です。80代以上になると認知症などで煩わしいことはできなくなりますが、70代なら動ける時間も体力もまだあります。わが家の課題を知って相続対策をしてもらい、そのうえで安心して長生きしてもらうようにしましょう」(同)
まずは現状把握
相続を考える場合、まず行うべきは「現状把握」だ。「今、親が亡くなったらどうなるか」を考えるのだ。
基本的に行うことは三つ(表)。一つ目は「相続人は誰か」である。
結婚していれば「配偶者」は必ず法定相続人になる。子供がいれば同様に法定相続人になり、一般的に配偶者と子供(配偶者が亡くなっていれば子供のみ)で相続を行う世帯が多い。子供がいなければ直系尊属(親、祖父母)を遡り、親が亡くなっていれば兄弟姉妹が法定相続人になる。
法定相続人は合意すれば自由に親の財産を分けられるが、合意がない場合の法定相続割合も定められている。例えば配偶者と子供で相続する場合、それぞれが2分の1だ。子供は全員で2分の1で、複数いれば人数で割っていく。
次に「財産の規模や中身の確認」だ。これは完成すれば「財産目録」になるように丁寧に洗い出していきたい。
預貯金は金融機関の各口座ごとに残高を把握しよう。親世代は多くの金融機関に口座を持っている場合が多い。1990年代の金融危機でペイオフ(1金融機関で1人当たり元本1千万円とその利息以外は保証されない)を恐れたからだが、先の曽根さんは、全体を把握したら「整理」を親に頼むことを薦める。
「この際、ひとつに集約してもらうのがいいでしょう」