この経緯について、公益通報制度に詳しい中村雅人弁護士が問題点を指摘する。

中村雅人弁護士

「公益通報は決められた窓口に通報しなければならないものではない。また、公益通報であるかどうかは実質で判断されるので、本人が公益通報者保護法で保護の対象とされる公益通報であることを認識している必要もない。議員や報道機関への告発も、通報窓口への通報と同様に公益通報に該当すると考えられる」
 

2回にわたる不利益取り扱い

 つまり元県民局長は2度にわたって公益通報したことになるという。告発文が誰によって書かれたものか、県は”犯人捜し”をした可能性があり、これは公益通報者保護法が禁じている「通報者の探索」に当たる。そして公益通報制度の下では、雇用者は通報者に対して、人事上などあらゆる不利益な取り扱いをしてはならないことになっているが、県は元県民局長を1度目は解任し、2度目は懲戒処分にした。中村弁護士がこう話す。

「県は2回にわたって、公益通報者保護法で禁じられている通報者への不利益取り扱いを施したことになる」

 県民局長職を解任されるまでの間、元県民局長は十分な事情聴取を受けなかったと主張していた。本人が報道機関宛てに書いた文書によると、人事当局とは電話で、告発文は1人で作成したことを説明し、「情報の入手経路について漠然としたやりとりがあったのみ」だという。

 この点についても中村弁護士は、

「処分にあたって、十分な弁明の機会を与えていなかったのであれば、それも大きな問題だ」

 と批判する。元県民局長の告発が、その内容の面から公益通報者保護法の保護の対象になりうるものかどうかは、7つの疑惑を個別に判断する必要があるという。同法で扱う法令違反は、あらかじめ定められている。「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律(約500本)に規定する犯罪行為、過料対象行為、又は刑罰若しくは過料につながる行為」とされる。対象としてもっともわかりやすい法律は刑法だ。

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