今はもう、あれほどの荷を背負うことはない。

 膨大だった資料の類はPCに保存しておけばいいし、よほどの奥地に分け入らない限り、 人がいるところには生活に必要なものがそろっており、もしも足りないものがあっても、現地で補填すれば良い。なので、医薬品は必要最小限のものにとどめているし、キャンプ関連用品は全く持っていない。

 現在、私の旅の装備にアフリカを訪ねるがゆえの特別なものはなく、荷物リストを書き出してみても、日本国内を1週間程度旅する際の持ち物とほとんど変わらない。30リットルの小型のバックパックに全てを収めてもまだ、空きがある。不安が減り、気持ちの余裕が増えるごとに、カバンの空きも増えるようになった。

 それでも、今でも必ず持っていくことにしている、アフリカ行きならではの持ち物がある。トイレットペーパーだ。アフリカでは、「大」をした際に紙を使う習慣のない地域が多い。トイレに備えられた汲み置きの水で、尻を拭うのが一般的だ。ホテルや空港など、外国人が利用するスペースではトイレットペーパーが用意されているが、バスを乗り継ぐ際の公衆トイレなどで用を足す場合は、トイレットペーパーを持参して駆け込むこととなる。

 ちょっとした売店ならばどこでもトイレットペーパーを買うことができるため、現地調達でも構わないのだが、現地で売られているものと日本のものでは、「巻き」が違う。厳密に計り比べたことはないが、1ロールあたりの長さが圧倒的に違うため、現地で購入したものはすぐに無くなってしまうのだ。日本をたつ際にはいつも、1ロールだけカメラバッグに忍ばせ、“大事に大事に”使うことにしている。

 今回も日本のトイレットペーパーを1つたずさえ、2月末まで、西アフリカを取材してまいります。

岩崎有一(いわさき・ゆういち)
1972年生まれ。大学在学中に、フランスから南アフリカまで陸路縦断の旅をした際、アフリカの多様さと懐の深さに感銘を受ける。卒業後、会社員を経てフリーランスに。2005年より武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。

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