裏社会というものは、いわゆる"普通の暮らし"をしている者にとっては縁遠い世界だと考えている人も多いことでしょう。しかし、昔はハッキリと線引きされていた「表の社会」と「裏の社会」の境界線が、現在は非常に曖昧になっているようです。そのため、「『裏社会の搾取』に知らないうちに騙され巻き込まれてしまう若者が実際のところ急増している」(同書より)と、書籍『裏社会から人生を守る教科書』の著者である懲役太郎さんは記します。
では、どうすれば前途ある若者が人生を棒に振らずに済むのでしょうか。それは、この社会の実態と危険性について知っておくことです。同書は"元極道"VTuberとしても活動する著者が、身近なところに潜む裏社会の脅威と騙しの手口を明かし、自分自身と大切な人の人生を守るための知恵を提供する一冊です。
日本という国はとても素晴らしいところがたくさんありますが、いっぽうで著者は現代の若者の「危機管理意識の低さ」について警鐘を鳴らします。著者は騙されやすい人が増えている原因をリストアップして分析し、それを予防することが危機管理意識を高めることにつながるとしています。
若者が陥りやすい社会の落とし穴として挙げているのが、「お金と仕事関連」「恋愛と遊び関連」「メンタル関連」という3つのテーマです。たとえば「お金」に関して陥りがちなのが、メイクやファッション、ブランド品、遊び方、アプリ課金など見栄や物欲のために際限なくお金が欲しくなってしまうという状態。ここで「楽して稼ぎたい」という欲に駆られてしまうと、そこに悪党たちがつけ込んできます。
「犯罪歴を負って経歴が傷つく『闇バイト』を紹介してくるかもしれないし、心に傷を負う『体を売る仕事』を紹介してくるかもしれない。見栄と物欲から始まる『楽して稼ぎたい欲求』に気をつける必要がある」(同書より)
私たちは「どんなにお金を使っても、上には上がいて見栄に切りはない」と知り、「自分の人としての価値は、お金では買えない」ことに気づくことが大切だと続けます。
ほかにもマッチングアプリやドラッグ、ブラック企業など、日常生活の延長線上に裏社会の搾取が待ちかまえていることは少なくありません。裏社会から自分の身を守るためには、その手口を事前に知ること、自分の通う場所や付き合う人間関係を見極めることがいかに大事か気づかされます。
とはいえ、「今この瞬間も悪党の手口はアップデートされて新しいものが誕生している」(同書より)と著者。最新の手口については文中にあるQRコードから著者のYouTubeチャンネルに飛んで学べるようになっており、書籍とYouTubeを連動させる試みがなされています。
同書は若者に向けた語り口になっていますが、大人にとっても知っておくべき情報が満載です。もうすぐ夏休みが始まりますが、今年は同書を読んで脅威から自分の身を守る方法を親子で話し合ってみるのもよいかもしれません。
[文・鷺ノ宮やよい]