竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 企業や従業員に対する過剰な要求やクレーム「カスタマーハラスメント」が社会的な問題になっていますね。そんな状況をうけてローソンでは、従業員が着用する名札の表示内容の見直しを行いました。

 このところ名札に実名が書いてあることで、店舗で働くクルーさんが不安を感じてしまうことがあるという声をよく聞くようになっていました。それをうけてお店の側から何らかの改善策をとの希望も出ていたんです。

 もちろんお客様の立場からすれば、誰が対応してくれたかわかった方がより買い物はしやすいでしょう。そことの兼ね合いも考えつつ、「アルファベットによる任意の文字やイニシャル表記も可」という選択肢にたどりつきました。

 コンビニにおけるカスハラの問題は、以前からあったのかもしれません。

 それに対して声を上げやすい世の中になり、私たちもそういった問題をきちんと認識できるようになってきた。そう前向きにとらえて、きちんと対応しなければならない。そんな思いで、従業員のプライバシーを守る方向に舵を切ったんです。

イニシャル表記の名札で接客する従業員

 具体的には、これまでは実名(名字)での記載を基本としていたところを、店舗の判断で「役職+任意のアルファベットまたはイニシャル」表記を可としました。たとえば「たなか」と表記していたものを、「クルー TK」とするなどのイメージです。

 あわせて身だしなみに関するマニュアルも見直し、宗教上の理由から頭髪を覆う布などの着用を認めるルール改正も行いました。ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包括/受容)が社会に求められる中、私たちも変わっていかなければなりません。

 お客様が気持ちよく買い物ができ、そして働く人も不安なく働ける環境を、今後も作り続けていきます。

AERA 2024年7月15日号