わたしの祖父母は、孫や父母のために、あるだけお金を使った。
それだけでなく、自分が欲しいものも、ちゃんと買っていた。
そんな祖父母の口癖は、
「葬式代だけは、ちゃんと残している」
「生きているうちに誰かのために使ったら『ありがとう』って、言ってもらえるけれど、死んで残していても、『ありがとう』って言ってもらってもわからへん。そんなのイヤやわ」
気前良くて、明るい祖父母だった。
そんな祖父母だから、わたしもわたしの家族も長生きしててほしかった。
寝込んでも、ボケても、「早く死んでほしい」なんて、誰ひとり思わなかった。
それどころか、
「全部、わたしらに使ってくれても、葬式くらいあげてあげるよ」
なんて言って、笑っていた。
どうもその血筋なのか、母も言う。
「葬式代は残しているけれど、預金は、あんたらのために使ったわ」
そして、いつでも気前が良い。
自分には、そんなにお金を使わないけれど、孫やわたしたち兄弟のためには使ってくれる。
「お金なんて、持って死ねないし……」
「ボケたら、適当に財産処分して、看病して」